影響

地球温暖化の影響に関しては、多くの事柄がまだ評価途上である。

しかしその中でもAR4、およびイギリスで発行されたスターン報告が大きな影響力を持つ報告書となっている。

地球温暖化による影響は広範囲に及び、「地球上のあらゆる場所において発展を妨げる」(AR4)と予想されている。

その影響の一部は既に表れ始めており、IPCCなどによるこれまでの予測を上回るペースでの氷雪の減少などが観測されている。

AR4 WG IIによれば、地球温暖化は、気温や水温を変化させ、海水面上昇、降水量の変化やそのパターン変化を引き起こすとされる。

洪水旱魃猛暑ハリケーンなどの激しい異常気象を増加・増強させ、生物種の大規模な絶滅を引き起こす可能性などが指摘されている。

大局的には地球温暖化は地球全体の気候生態系に大きく影響すると予測されている。

個々の特定の現象を温暖化と直接結びつけるのは現在のところ非常に難しいが、統計的には既に熱波や大雨等の極端な気象現象の増加が観測されており、今後さらに増えると見られている

こうした自然環境の変化は人間の社会にも大きな影響を及ぼす。

真水資源の枯渇、農業漁業などへの影響を通じた食料問題の深刻化、生物相の変化による影響などが懸念されており、その影響量の見積もりが進められている。

AR4では「2–3°Cを超える平均気温の上昇により、全ての地域で利益が減少またはコストが増大する可能性がかなり高い」と報告されている。

スターン報告では、5–6°Cの温暖化が発生した場合、「世界がGDPの約20%に相当する損失を被るリスクがある」と予測し、温室効果ガスの排出量を抑えるコストの方が遙かに小さくなることを指摘している。

日本では国立環境研究所などによる影響予測が進められており、豪雨の増加、農業用水の不足、植生の変化、干潟や砂浜の消滅、地下水位の上昇などによる被害の増大の予測が報告されている。

特に、農業では米がとれなくなり、漁獲量ではアワビやサザエ、ベニザケが減少するなどの甚大な被害が予想される。

寒害の減少、北日本における米の生産向上など一部では利益も予想されるが、被害が大幅に上回ると見られる。

地球温暖化の影響#日本における予測内容を参照。 例えば日本南部ではデング熱が流行する危険性が増し、北海道東北地方ではゴキブリなどの害虫が見られるようになる。

気温への影響

気候モデルによる今後の気温の上昇予測(

2005年から過去50年間の、世界の山岳氷河の平均の厚さの推移

人為的な温室効果ガスの排出傾向に応じて、さらに気温が上昇し、下記のような現象が進行することが懸念されている。

  • 1990年から2100年までの間に平均気温が1.1–6.4°C上昇。これは過去1万年の気温の再現結果に照らしても異常。
  • 北極域の平均気温は過去100年間で世界平均の上昇率のほとんど2倍の速さで上昇した。北極の年平均海氷面積は、10年当たり2.1%–3.3%(平均2.7%)縮小している。
  • 陸域における最高最低気温の上昇、気温の日較差の縮小。
  • 温暖化が環境中からの二酸化炭素やメタンなどの放出を促進し、さらに温暖化が加速する(正のフィードバック効果)。
  • サンゴ礁の白化(サンゴ礁の劣化)による、砂礫の供給能力の低下。サンゴ礁によってできている島の水没。

気象現象への影響

北大西洋における熱帯性低気圧の観測数。青:熱帯性低気圧、

気象現象への影響は一括して「異常気象の増加」、気候への影響は「気候の極端化」と表現されることがある。温暖化に伴って気圧配置が変わり、これまでとは異なる気象現象が発生したり、気象現象の現れ方が変わったりすると予想されている。たとえば下記のような変化が懸念されている。

  • 偏西風の蛇行、異常気象の増加。日本周辺の気候にも大きな影響を与える可能性。
  • アメリカ南東部・東部の海水温上昇により、竜巻の発生域が南東部や東部に広がる。
  • 暑い日・暑い夜が増加し、全体的に昇温傾向となる。高温や熱波・大雨の頻度の増加、干ばつ地域の増加、勢力の強い熱帯低気圧の増加、高潮の増加。

降水量に関しては異論もあるものの、たとえば下記のような影響が懸念されている。

海水面の上昇[編集]

過去約120年間の海水面の推移(地質が安定している世界23地点の平均)

気温の上昇により氷床氷河の融解が加速されたり海水が膨張すると、海面上昇が発生する。

これに関しては下記のような予測や見積もりが為されている。

  • ここ1993-2003年の間に観測された海面上昇は、熱膨張による寄与がもっとも大きい(1.6±0.5mm/年)。
  • ついで氷河と氷帽(0.77±0.22mm/年)、グリーンランド氷床(0.21±0.07mm/年)、南極氷床(0.21±0.35mm/年)とつづく。
  • 日本沿岸では(3.3mm/年)の上昇率が観測されている
  • 第4次報告書(2007)では、最低18 – 59cmの上昇としているが、これは氷河の流出速度が加速する可能性が考慮されていない値である
  • AR4以降の氷床等の融解速度の変化を考慮した報告では、今世紀中の海面上昇量が1〜2mを超える可能性が指摘されている海面上昇も参照)。

これにより、下記のような影響が出ることが懸念されている。

  • 浸水被害の増加、低い土地の水没。オセアニアの島国ツバルヴェネツィアの歴史的建造物の水没、等々。
  • 汽水域を必要とするノリカキアサリなどの沿岸漁業への深刻なダメージ。
  • 防潮扉、堤防、排水ポンプなどの対策設備に対する出費の増加。
  • 地下水位の上昇に伴う地下構造物の破壊の危険性、対策費用の増加。
  • 地下水への塩分混入にともなう工業・農業・生活用水への影響。

海水温・海洋循環への影響

地球規模の気温上昇に伴い、海水温も上昇する。これにより、下記のような影響が懸念されている。

  • 生態系の変化。
  • 水温の変動幅拡大に伴う異常水温現象の増加。太平洋熱帯域でのエルニーニョ現象の増強。
  • 海流の大規模な変化、深層循環の停止。およびこれらに伴う気候の大幅な変化。

生態系・自然環境への影響

温暖化の影響は生態系にも大きな影響を与えることが懸念されている。

  • 二酸化炭素の増加による生物の光合成の活発化。
  • 生物の生息域の変化。
  • 生物種の数割にわたって絶滅の危機。
  • サンゴの白化や北上(北半球)・南下(南半球)。
  • 寒冷地に生息する動物(ホッキョクグマアザラシなど)の減少。
  • 日本においては、ブナ林分布域の大幅減少や農業への深刻な影響。

社会への影響

人間の社会へも下記のように大きな影響が出ることが懸念されている。

  • 気象災害の増加(熱帯低気圧、嵐や集中豪雨)に伴う物的・人的・経済的被害の増加
  • 気候の変化による健康への影響や生活の変化
  • 低緯度の感染症マラリアなど)の拡大
  • 雪解け水に依存する水資源の枯渇
  • 農業、漁業などを通じた食料事情の悪化
  • 永久凍土の融解による建造物の破壊
  • 日本では、60%の食糧を輸入しているため、国外での不作や不漁、価格変動の影響を受けやすく、食糧供給に問題が生じることが予想されている。