なかなか・・・
投稿日:2018年10月31日
日銀は物価見通しを一段と下方修正
日本銀行は31日、消費者物価の見通しを7月に続き一段と下方修正した上で、さらに下振れリスクの方が大きいとの判断を示した。日銀が目標としている2%の達成がさらに遠のいた。同日の金融政策決定会合では、現行金融政策をすべて据え置いた。
同日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で日銀は、消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率見通し(政策委員の中央値)を2018年度から20年度まですべて下方修正した。18年度が0.9%(前回7月は1.1%)、消費増税の影響を除く19年度は1.4%(同1.5%)、20年度が1.5%(同1.6%)。実質国内総生産(GDP)成長率はおおむね不変とした。
黒田東彦総裁は同日の会見で、「経済、物価共に下振れリスクの方が大きい」とし、米中の貿易摩擦のエスカレートが「米中のみならず世界貿易、世界経済全体に与える下方リスクに一番注目している」と説明。「大きな下方リスクが顕在化して、経済物価見通しに大きな影響が出てくることになれば、金融政策自体を調整するということになる」と語った。
金融面の不均衡リスク
展望リポートでは、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続く下で金融機関収益の下押しが長期化すると、「金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある」と指摘。「先行きの動向には注視していく必要がある」とした。日銀が13年4月に異次元緩和を開始して以来、展望リポートで金融面の不均衡リスクを「注視していく必要」と明記したのは初めて。
黒田総裁は、金融機関収益の低下について、「地域金融機関は潤沢な自己資本を持ち、流動性も十分あるので、直ちに問題が生じることはない」としながらも、「長い期間では影響が出てくる恐れがある」との見方を示した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは発表後のリポートで、金融面の不均衡リスクの点検で留意コメントが付いたことは「黒田日銀の金融政策判断において、従来よりもマクロプルーデンス(信用秩序維持)の観点を重視していく可能性を示した」と指摘した。
2020年『省エネ基準』
投稿日:2018年10月29日
新築住宅の省エネ基準が『義務化』
2020年より住宅を新築する際には『省エネ基準』への適合が『義務化』される。
これは戸建ての省エネルギー性能に対して最低限度の基準を設ける法律!
1980年に初めて設けられて以降、これまで省エネ基準は建築主への努力義務で強制力はなかったが、2020年からは改正省エネ基準に適合していることが義務化される見込み!
この義務化は日本の住宅市場に影響を与えるのではないかと懸念されております。
今回義務化される基準は2018年7月現在、まだ確定してないが業界関係者の間ではおそらく2016年(平成28年)に制定された通称『28年基準』が適用されるのでは、とみられております。
省エネ法に規定する省エネルギー住宅は『長期優良住宅』として住宅ローンの金利引き下げや税金の特例措置、補助金が受けられたり、地震保険料の割引がされるなど優遇措置がある。
しかしながら、消費者にとってそうした措置がそれほど魅力的でないのか、1999年省エネ判断基準の適合率は、2014年時点で2000m2以上の新築住宅で約5割、300~2000m2で約3割ほどにとどまっている。
28年基準とは
第三者の専門家が、住宅の耐震性や断熱性などを客観的に評価する住宅性能表示制度などに用いられている基準。
具体的には住宅の断熱性能とエアコンや照明、給湯などの使用による一次エネルギー消費量の2つを評価する。
たとえば断熱性能は外皮平均貫流率という指標で表され、数値が小さいほど性能が高い住宅となります。
28年基準は南関東の場合で『0.87』これは平成4(1992)年に定められた基準
(1.54)の約1.8倍の断熱性を有していることになる。
社会保障
投稿日:2018年10月28日
社会保障論
・こども保険について
1.こども保険とは
少子高齢化が進む日本で、子育てや教育にかかる負担を社会全体でどう分かち合い、国の財政を支えていくのかが問題視されている。その問題を解決するために出された案が「こども保険」である。幼児教育と保育を無償にする財源確保策として、小泉進次郎氏らが提案した。第一段階では、厚生年金などの保険料率を、勤労者と企業労使折半でそれぞれ0.1%ずつ計0.2%、自営業者等が加入する国民年金の場合は月160円引き上げ、これを原資として3,400億円ほどの財源を調達し、就学前の乳幼児(約600万人)を抱える家庭に給付する児童手当の上乗せ額を月5,000円、年間6万円引き上げる。または、保育所等の拡充を行い待機児童の削減や、年収360万円以下世帯の保育料の実質無償化を実現する。第二段階では、医療介護の給付改革を徹底的に進めつつ、さらに勤労者、企業の保険料率を各々0.5%ずつ計1.0%、自営業者等の国民年金の場合には月830円引き上げることで、1.7兆円ほどの財源を調達でき、児童手当の上乗せ額を25,000円、年間30万円にまで引き上げることが可能となる。現在、幼稚園や保育園の利用者負担額は、平均で1~3万円程度(保育園の場合、認可・認可外、居住地域、所得水準により異なる)なので、児童手当の上乗せ額を25,000円にできれば、幼児教育と保育サービスの実質無料化が達成できる。
2.子供のいない世帯からの徴収について
自分がお金を払っても、子供がいなければ何の得もない、還元がないという声が多く上がっている。たしかに、他人の家の子供に自分が働き稼いだお金が使われていると思えば、損をしている気分になるだろう。しかしよく考えてみると、自分が高齢者となり年金を受け取る側となった時、その年金のサイクルを回してくれているのは若者であることに気づく。1950年時点では12.0人の生産年齢人口で1.0人の高齢者を支えていたが、2010年時点では2.8人。さらに2060年の予想人口比率では1.3人にまで減少する。これを見ると、若者を増やさなければ日本の「年金制度」が成り立たなくなるのがわかる。なので、現時点では子供がいない世帯からも徴収するのは酷だなと感じるが、長い目で見ると還元されると思う。
3.こども保険の制度化を支持できるか
私自身、現在大学生ということもあり、給料から税金と社会保険が引かれると聞いてもパッとこないのが正直なところだ。決して高くはない初任給から様々な名がつく税が引かれ、その他に生活費もかかる。自分が生きていくのに精一杯と世間では声が上がっており、結婚や出産ができないと言っている若者が大勢いる。その経済面の問題が結婚や出産に踏み切れない一因なのにもかかわらず、こども保険と言われ、さらに負担が増えることは、たやすく首を縦に振れるものではないと思った。今回、調べてみると若者と高齢者の経済のサイクルをしない限り、日本の現状を打破することが難しいのは理解できた。しかし、若者が自分の人生を楽しめない現状は回復できるのかと疑問に感じた。
対象は年収1,000万円以上の人などと制限をつけない限り、現在10代20代の人の人生がこれから生まれてくる赤ちゃん、高齢者の人たちの為の人生になってしまうのではないかと懸念する。
これから増える!介護保険のサービス?
投稿日:2018年10月27日
・介護保険のサービスを利用するためには
介護保険のサービスを受けるためには、「どの程度の介護が必要なのか?」を判断する「要介護認定」を受ける必要があります。要介護認定の流れは、次の通りです。
1.主治医を決める
要介護度を判断する材料の一つとなる意見書を書いてくれる主治医を決める。
2.市区町村の窓口で手続きを行う
市区町村にある介護保険担当の窓口へ行き、介護保険申請書(要介護認定申請書)に必要事項を記入し、申請を行う。
3.認定調査を受ける
申請後1~2週間ぐらいのうちに訪問調査(認定調査員)が要介護者の心身の状態についての聞き取り調査を行うため、自宅へ調査に来るのでそれを受けます。
4.認定結果の通知
認定調査の結果や主治医の意見書などをもとに、保険・医療・福祉の専門家たちによる介護認定審査会によって、どの程度の介護が必要かが判断されます。ここで介護保険のサービスが必要であると判断された場合、心身の状態などに応じて「要支援1~2」「要介護1~5」という要介護度が決められます。
・生活保護制度の原理・原則
国家責任の原理
国家責任の原理とは「憲法第25条」の理念に基づいて、国家が責任を持って、国民に対して健康で文化的な最低限度の生活水準を保障するという考え方です。
無差別平等の原理
無差別平等の原理とは、すべての国民は生活保護法の定める要件を満たしていれば、差別される事無く平等に保護を受ける事が出来るという考え方です。
これは普遍主義に基づく保護の事を表していて、年齢、性別、労働能力の有無などによって対象者を選ぶ選別主義を排除する働きのある考え方です。
最低生活保障の原理
最低生活保障の原理とは「憲法第25条」にもうたわれている「健康で文化的な最低限度の生活水準」を保障するナショナル・ミニマムという考え方です。
ナショナル・ミニマムとは社会的に容認された国民の最低限度の生活水準を国家の責任において保障する事です。
ただしこれは「国民のなかの最低の生活を保障する」ような日本で一番低い水準に生活を合わせて保障するといった内容ではなく「社会の構成たるに値する健康で文化的な生活水準」を設定し、その水準に基づいて保護を行うという考え方です。
補足性の原理
補足性の原理とは、生活困窮者が持っている資産や能力を最大限活用し、それでも不足する場合に、その不足分を補う形で保護を行うという考え方です。
したがって、年金などによって一定の収入があったとしても、ナショナル・ミニマムを下回る場合は、ナショナル・ミニマムとの差を補う形で各扶助が支給されます。
・生活保護実施上の原則
申請保護の原則
保護は、要保護者、その扶養義務者またはその他の同居の親族の申請に基づいて開始されます。
基準及び程度の原則
保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭または物品で満たすことができない不足分を補う程度において行います。
必要即応の原則
保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人または世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行います。
世帯単位の原則
保護は、世帯を単位として、必要かどうかの判断や、保護の程度の決定をします。
・生活保護における医療扶助の問題
生活保護の「医療扶助」はサービスの現物支給で、医療費は直接医療機関に支払われ本人の負担はありません。従って、国民健康保険の加入者は生活保護が決定すると、国民健康保険から脱退し生活保護の「医療扶助」を受けることになります。また、それまでの健康保険証に代わり福祉事務所から医療券を発行して貰うことになります。
生活保護の「医療扶助」で、しばしば問題になるのが過剰診療の問題です。通常、医療機関と患者は、ある種の緊張関係でバランスが保たれています。
ある種の緊張関係とは医療機関は最適で最も経済合理性に合う医療を提供しなければならず、患者は最も医療費が安い医療機関や医学的処置を求めています。
従って、患者は気に入らない医師や医療機関での受診を断ることもできるのです。その結果、過剰な検査や投薬や医学的処置が回避される訳です。
しかし、生活保護の「医療扶助」に於いては、この様な医療機関と患者の緊張関係のバランスが最初から崩れています。生活保護の被保護者は福祉事務所から指定された医療機関で受診することが義務付けられますから、医師や医療機関を選択することができません。また、自己負担はゼロですから、多少の過剰な投薬や検査があっても黙認してしまう傾向があります。この差の積み重ねは非常に大きな金額となります。
従って、2013年の秋の臨時国会で提出が予想される「生活保護法の改正案」に於いては、被生活保護者の医療の一部自己負担が盛り込まれています。
・子育て支援対策/育児休業/各種手当
1)育児休業や短時間勤務等の両立支援制度の定着
育児・介護期は特に仕事と家庭の両立が困難であることから、労働者の継続就業を図るため、仕事と家庭の両立支援策を重点的に推進する必要がある。直近の調査では、女性の育児休業取得率は87.8%(2011(平成23)年)と、育児休業制度の着実な定着が図られつつある。しかし、第1子出産後の女性の継続就業割合をみると、子どもの出生年が2005(平成17)年から2009(平成21)年である女性の継続就業率は38.0%(2010(平成22)年)にとどまっており、仕事と育児の両立が難しいため、やむを得ず辞めた女性も少なくない。
また、男性の約3割が育児休業を取りたいと考えているが、実際の取得率は2.63%(2011年)にとどまっている。さらに、男性の子育てや家事に費やす時間も先進国中最低の水準にとどまっている。こうした男女とも仕事と生活の調和のとれない状況が女性の継続就業を困難にし、少子化の原因の一つとなっていると考えられる。
2)両立支援制度を利用しやすい職場環境の整備
育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境の整備を行う事業主等を支援するため、両立支援助成金の支給を行っている。
◦事業所内保育施設設置・運営等支援助成金
労働者のための事業所内保育施設を設置・運営等したとき
◦子育て期短時間勤務支援助成金
子育て期の労働者が利用できる短時間勤務制度の導入・利用促進に向けた取組を行い、利用者が出たとき
◦中小企業両立支援助成金
•代替要員確保コース
育児休業取得者に対し、代替要員を確保し、原職等に復帰させたとき
•休業中能力アップコース
育児又は介護休業者が円滑に職場に復帰できるよう、能力開発及び向上に関するプログラムを実施したとき
•継続就業支援コース
育児休業取得者を原職等に復帰させ、一年以上継続して雇用するとともに、両立支援制度を利用しやすい職場環境の整備のため、研修を実施したとき(※初めて育児休業を終了した労働者が2011(平成23)年10月1日以降2013(平成25)年3月31日までに出た事業主が対象)
•中小企業子育て支援助成金
2006(平成18)年4月1日以降、初めて育児休業取得者が出たとき。ただし、2011年9月30日までに育児休業を終了した者までを対象とする。
3)妊娠中及び出産後の健康管理の推進
4)育児休業の取得等を理由とする不利益取扱いの防止
5)子育て女性等の再就職支援
・労災保険制度の特徴
労災保険は、業務上の災害や通勤上の災害によって、負傷したり、病気になったり、障害が残ったり、死亡した場合に被災労働者やその遺族の保護のために必要な給付をしてくれる政府(厚生労働省)が保険者、使用者(事業者)が加入者となっている強制保険制度です。
3つの特徴.
■ 国が運営している公的な保険だから確実
■ さまざまな給付がある複合型の保険だから安心
■ 手厚い給付なのに保険料が安い
手厚い保障
療養補償・ 傷病が治るまで、病院の治療費が10割支給されます
休業補償・ 休業中の生活保障として、給付基礎日額の8割が支給されます
(労働者の給付基礎日額は3か月平均の給与となりますが、一人親方は加入時に自分で設定した3,500円~25,000円の金額となります)
遺族補償・ 死亡したとき、遺族の人数等に応じて年金または一時金が支給されます
障害補償 ・後遺障害が残ってしまったとき、障害等級に応じて年金または一時金が支給されます。
・消費増税の理由
消費税増税の理由
•高齢者が増えている
•社会保障財源のために増税する
•若者だけでなく高齢者にも負担させる
•所得税・法人税は不景気で税収減
•消費税は不景気でも税収は変わらない
一番の理由としては、増え続ける社会保障費の財源にするためです。
そのため、高齢者から最も徴収しやすい、消費税を増税しますというわけです。
「こども保険」構想
わが国の年金制度では、加入者が保険料を拠出し、それに応じて年金給付を受けます。この仕組みを社会保険方式といいます。基本的に保険料を納めなければ給付は受けられませんが、給付は、保険料の額や支払った期間に応じて決められるため、拠出と給付の関係がより明確であり、保険料拠出について加入者の合意を得やすいメリットがあります。
社会保険方式と対比されるのが、給付を税金でまかなう税方式です。
子どもが増えれば、人口減少に歯止めがかかり、経済・財政や社会保障の持続可能性が高まる。こども保険の導入により、企業や勤労者を含め、全ての国民にとって恩恵があり、就学前の子どもがいない世帯にとっても、間接的な利益がある。
なお、従前より、政府も少子化対策や子ども・子育て支援に取り組んでいる中、最大の問題は、社会全体で子育てを支える国の本気度が若者や現役世代に伝わっていないことである。「社会全体で子育てを支える」ことを明確化する観点からも、全員への徴収となった。
これからますます進む?仮想通貨
投稿日:2018年10月27日
仮想通貨の意義と日本経済への影響
- はじめに
- 通貨の機能と現状
- 仮想通貨の特徴
- ビットコインとブロックチェーン
- イーサリアム
- 仮想通貨の価値と価格
- 仮想通貨の価値
- 仮想通貨の価格
- 仮想通貨のボラティリティ
- 経済への影響
- 仮想通貨の注意点
- おわりに
1.はじめに
2016 年の通常国会(第 190 回国会)において資金決済法が改正され、ビット コインをはじめとする仮想通貨についての規定が盛り込まれた。これは「仮想 通貨法」とも呼ばれており、2017 年4月1日から施行されている。マネーロン ダリング・テロ資金供与規制や利用者保護規制などの観点から仮想通貨交換業 者(取引所など)に登録制が導入され、仮想通貨のソフトインフラ整備が本格 化した。また同年7月1日からは、仮想通貨の取引(円とビットコインの交換 など)に係る消費税が非課税となった。仮想通貨はビットコインの他にもイーサリアムをはじめ数多く存在し、ウェブサイト情報1では、850種類以上に達している。 仮想通貨はインターネット上のデジタルな無記名の資産であり、広義の金融資産ともいえるが、金融商品取引法上の金融商品には該当しない。「仮想」通貨 というと何か現実のものではない語感があるが、原語は cryptocurrency(暗号 通貨)であり、円やドルなどの法定通貨とは全く異なった暗号技術を用いて創造されるものの、主要なものは法定通貨と交換可能であり、実際に通用する支払手段であることに変わりはない。そして、何よりも仮想通貨はブロックチェー ンという経済社会に大きなインパクトを及ぼし得るイノベーションがもとになっているところに特徴がある。 一部の諸外国では既に取引所の免許制・登録制などが導入されており、我が国でも仮想通貨法で体制整備に踏み出したことから、今後さらに普及していく可能性がある。以上を踏まえ、本稿ではまずイントロダクションとして通貨の機能と現状に触れ、通貨がインターネット化、スマホ化しつつあることを述べる。次にビットコインをはじめとする仮想通貨とブロックチェーンの概要、価値と価格の考え方などについて指摘し、最後に経済のデジタル化が進展する中での通貨の将来について私見を述べたい。
2.通貨の機能と現状
通貨(貨幣)の機能については、従来から価値の尺度、交換手段、価値(富)の保蔵手段の3つが挙げられている。歴史的に見れば、貝殻や穀物、家畜などの物品貨幣から出発し、金や銀などの金属貨幣を経て広く紙幣が用いられるようになった。通貨は国家による保証がないと成立しないと思われがちであるが、米国でも南北戦争まではいわゆる民間貨幣が流通していた。何が通貨化を説明する最大のポイントは一般的受容性であるといってよく、その時代時代で様々な通貨が受け入れられてきた。
上述の通貨にはいずれも物理的な形があるが、形がなければ機能を満たさないわけではない。金融機関の要求払預金、すなわち預金通貨はそれ自体、目に見えるものではないし、IT化の進展で登場した電子マネーやデジタル通貨も同様である。今日では、現金を持ち歩かなくても、クレジットカードで支払いができるようになり、買い物をすれば即時に預金から引き落とされるデビットカードも使われるようになってきた。諸外国ではクレジットカードよりデビットカードの方が一般的な国も多いが、いずれにせよ通貨のカード化の時代が到 来している。 さらに今日では、プリペイド型やポストペイ型の電子マネーが登場し、クレ ジットカードやデビットカードのモバイル決済を含め、スマートフォンでの支払いも次第に浸透してきた。我が国ではまだ定着しているとはいえない状況で あるが5、ケニアなどサブサハラ・アフリカ地域や中国をはじめとする諸外国での普及には目を見張るものがあり、通貨のスマホ化の時代 が到来しようとしている。そしてこのような通貨のスマホ化をさらに推し進める可能性をもった存在が仮想通貨である。
3.仮想通貨の特徴
仮想通貨はビットコインを嚆矢とする。リーマンショック後の 2010年ごろに普及しはじめ、紆余曲折がありながらも次第に浸透していく一方、様々な仮想通貨がICO(株式のIPOに相当するもの。)により出現し種類が増加していった。2017 年8月末現在、仮想通貨全体の市場規模は 17 兆円 に達し(図表1-1、1-2) 、ビットコイン、イーサリアムはそれぞれ8兆円、 4兆円、ビットコイン・キャッシュ、リップル、ライトコイン、ネム、ダッシュ、 アイオータ、モネロ、ネオはそれぞれ1兆円超~1,000 億円超に達している。 ここではビットコイン、イーサリアムの概要について述べるとともに、仮想通貨を支えるブロックチェーン技術の特徴を指摘する。後述するようにブロックチェーンにも様々なタイプがあるが、その代表はビットコインで使われているような、不特定多数の人々が分散型台帳を共有することで改ざんなどの不正を不可能にしているパブリックなブロックチェーンである。
(1)ビットコインとブロックチェーン
①ビットコインの誕生と特徴
ビットコインはリーマンショック直後の 2008 年 10 月、「サトシ・ナカモト」 氏がネット上に公開した論文において構想が示され、2010 年頃から普及しはじめた。同氏が日本人かどうかは諸説があり、今日でも判然としていない。当初は1BTC(単位としてのビットコインを BTC と記述する)が 10 円に満たなかったが、最近では50万円に達することもあり、5万倍の上昇率である。なお、2017年9月には中国の仮想通貨取引所の閉鎖報道があり価格が乱高下しているが、これについては後述する。
想通貨の供給メカニズムは法定通貨とは異なり、当初、仮想通貨の開発者 などに付与されたり、ICO時に資金提供者に対価として供与されたり、あるいは取引の信頼性を保証するためのマイニング(採掘)と呼ばれる活動に対する報酬として付与されたりしている10。ビットコインの場合 には総発行量はあらかじめ 2,100 万 BTC と定められており、これを超えること はない11。マイニングに対する報酬としてのビットコインは指数関数的に減少 していき、約4年毎(21 万ブロック毎)に2分の1になる。当初は1ブロック当たり 50BTC であったが、2012 年 11 月に 25BTC、2016 年7月に 12.5BTC となっ た。これによりビットコインの発行は 2140 年頃に 2,100 万 BTC となり、これ 以上発行されなくなる(図表3)。2017 年8月末現在の発行高は 1,654 万 BTC である12。将来、マイナー(採掘者)は報酬としてビットコインを受け取ること ができなくなっても、取引手数料が収入として残ることから、マイニングひいてはブロックチェーンの維持に特段の問題はないとされるが、手数料のみでマイニングのインセンティブが維持できるかどうかについては疑問視する見方もある。
https://bitinfocharts.com/bitcoin/によれば、1 取引当たりの手数料は平均値で 6.9 ドル、中央値で 4.2 ドルである。
ビットコインのようなデジタル通貨は、インターネットというサイバー空間 上の存在であり、サイバー攻撃に対するセキュリティ対策が不可欠であること から、1970 年代以降米国を中心に開発されてきた暗号技術が用いられている。 乱数を発生させてつくられた個人の暗証番号(秘密鍵といわれる)を、楕円曲 線といわれる曲線を用いて数学的に変換することで公開鍵がつくられ、さらに これをハッシュ関数といわれる、複雑なデータのインプットを要約されたアウ トプット(ハッシュ値)に変換する関数を用いて口座番号(アドレス)がつくられる。これらの変換は不可逆であり、公開鍵から秘密鍵を知ることや、アド レスから公開鍵を知ることはできないため15、公開鍵やアドレスが公開されて も(厳重に管理する限り)秘密鍵は他者に知られることはない。ちなみに秘密鍵、公開鍵、アドレスはいずれも数字とアルファベットの混在列(公開鍵は2 次元の形)で示され、個人を特定することはできない。すなわちビット コインには匿名性がある。 ビットコインの送金16は、秘密鍵で電子署名された送金情報をネットワーク 上で流し、これをネットワークに参加している「ノード」が公開鍵で確認する ことにより行われる17。ノードとは仮想通貨のコンピュータ・ネットワーク上で 他者の送金決済の承認を行う節点であり、要はこのような承認行為を行う意思 を持ってネットワークに参加しているコンピュータのことである。2017 年8月 末現在、世界で 9,000 超存在しており、漸増傾向にある18。ちなみにビットコイ ンの送金というのは、分散型の台帳上にそのデータが記録され、送金者の残高 が減少し受領者の残高が増加することを意味しており、ビットコインが物理的に移動するわけではない。
一般に、仮想通貨の売買は取引所を介して行われる場合が多い。仮想通貨と 同様、取引所もまたネット上の存在であり、2017 年8月末現在で活動している 取引所は我が国では 10 を超え、世界では 100 を超えている19。今日では、主要 国においては免許制・登録制となって規制されている場合も多いが、株式売買 の取引所と比較すれば小規模で分散している印象があり、特に小規模な取引所 では十分な管理を行うことが可能かどうか課題もあるように思われる。取引所 は仮想通貨の将来を考える上で重要なプレーヤーであるが、証券取引所と比較 すれば必ずしも情報公開が十分ではない印象もあり、アカウンタビリティの向 上が期待される。 ビットコインについて述べる上で避けて通れない出来事として、我が国の取引所におけるビットコインの消失事件(マウント・ゴックス事件)がある。2014 年2月、東京を本拠地とし一時は世界最大の取引所であったマウント・ゴック スが突然ビットコインの払い戻しを停止し、同月、民事再生法を申請して経営 破綻した。2015 年8月にはマルク・カルプレスCEOが逮捕され(私電磁的記 録不正作出・同供用、業務上横領容疑)、現在、東京地裁で公判中である。 検察側は同CEOが顧客のビットコインを横領し、残高を水増しするとともに不正に隠蔽したと指摘する一方、被告側はハッキングの被害にあったと主張 している。報道によれば、ハッキングを行ったのはブルガリアの仮想通貨取引 所 BTC-e の関係者とされるが、仮にハッキングがあったとしても、まず問われるべきはそれを許した取引所の管理体制の甘さであろう。なお、本事件により ビットコインの信頼性が損なわれたという報道もみられたが、現金が横領され たり盗まれても現金自体に罪はないのと同様、ビットコイン自体に罪があるわけではない。
②ブロックチェーンとは何か
(マイニングの機能と意義)
ビットコインの特徴は何といってもブロックチェーン、すなわち分散型台帳をつくる技術にある。法定通貨のように物理的に存在する場合には、偽札など偽造を如何に防ぐかが大きな課題となるが、仮想通貨のようなデジタル通貨に おいては、二重支払(同時支払)のような改ざん行為を如何に防ぐかが大きな 課題となる。 ブロックチェーンの信頼性を検証する作業はプルーフ・オブ・ワーク(Po W)といわれ、各ノード(マイナー)がひとかたまりの取引ブロック毎に約 10 分かけて複雑な計算、いわゆるマイニングを行うことで承認される。そして、このプロセスが繰り返されて出来上がったブロックがチェーン(鎖)のように 連なることでオープンな台帳、すなわちブロックチェーンがつくられる。マイナーは他者と計算力を競い、最も速く条件を満たす結果を出したマイナーが報酬としてビットコインを受け取ることができる。ただし、検証されたブロックが承認されるためには、参加しているノードの総計算能力の過半数による承認 が必要である。コンピュータで膨大な計算(PoW)を行うことがなぜ不正防止に役立つか といえば、多大なコストをかけて計算を行わなければ報酬としてのビットコイ ンを獲得できないという仕組みが不正取引の抑止力となるからである。マイニング能力がシステム全体の過半(50%超)を占める不正なマイナーが現れ、 不正行為を行ったブロックを分岐させ正しいブロックとして承認しマイニング し続けてしまえば不正は防止できないようにも思われるが、取引規模が拡大し マイニングコストも増大する中で過半を握るということは考えにくいことである。1ブロックに含まれる取引記録数はバラツキがあるが 1,000~2,000 前後、 全ブロック数は 2017 年8月末現在で約 48 万である。これをネット上に分散するノードが共有、いわば相互監視することで改ざんが防止され、信頼性が確保 される。個々のノードがネット上でつながり、情報交換を行う仕組みはP2P (peer-to-peer)方式と呼ばれ、従来のクライアント・サーバ方式のコンピュー タ・システムの対極をなすものである。 ビットコインはスクリプトといわれるプログラミング言語が用いられ、ソースコードは公開されており(オープンソース)、誰でも確認することができ提案も可能であるが、採択されるためにはコミュニティの支持が必要である。取引 もブロックチェーンの形で全てが公開されており、誰でもネット上で確認する ことができる。常時、世界中の不特定多数の人々の目にさらされ、マイニング という人為的に操作できない純粋な競争原理が貫徹しているからこそ信頼性の あるネットワーク・システムが構築できているのであり、ここに「打たれ強い」 ビットコインの神髄がある。一般的受容性がなくなれば消えていくであろうが、 そうでない限り人為的になくすことはできないのがビットコインである。