医師が認める家づくりⅡ
投稿日:2018年04月05日
健康づくりに大切なこと。
その中のひとつとして私が提唱するのが、適切な住まいづくり=「断熱」の重要性です。住宅の断熱・気密性能は、室内の温熱環境の改善につながり、寒さに起因する疾病等を予防し、住む人たちの健康を維持する効果が期待できます。
健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価(日本建築学会環境系論文集第76 巻第666 号, 735-740, 2011 年8 月)において、高断熱・高気密住宅の居住者へのアンケート調査に基づき、居住者のさまざまな疾病における改善率を定量化した上、健康維持がもたらすNEB について金額換算することを試み、大規模なアンケート調査を行いました。
健康と密接した、健康住宅=「断熱」の重要性が、ここでも明らかになったのです。
*以下引用:
健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価・日本建築学会環境系論文集第76 巻第666 号, 735-740, 2011 年8 月)
断熱・気密性能と健康の関係は、各国の様々な既往研究で示されてきました。例えば、ニュージーランドにおいては2001 年から地元組織を通して各コミュニティから200世帯ずつ希望者を募集し、大規模な介入実証実験が行われました。
これは、断熱改修を行った住宅と行なっていない住宅における、室内快適性と居住者の健康状態(風邪、不眠など)の差異を定量的に調査し、住民の欠勤が減少し、主観的な健康感が向上したことを示しています。
そして日本においても、断熱・気密性能向上によって様々な疾病が防止される傾向にあることが示されています。
実際、東北地方を中心に高断熱・高気密住宅を対象として実施したアンケート調査では、室内温熱環境の改善により、風邪や肩こりなどの症状が改善され、居住者の健康にとって良い影響を示す効果を得ています。
また、人口動態統計を用いて、全国の死亡数と気象データと対応付けて関連性を分析したところ、冬期において自宅内で心疾患、脳血管疾患による死亡の危険性が増加することを示しました。
ただ、上記の示しを評価するには、高断熱・高気密住宅に転居した人に対して、大規模な調査を行い、網羅的に疾病の改善率を定量化することが必要となります。そこで、2009年11 月から2010 年1 月にかけて、戸建住宅への転居経験者を対象に、様々な種類の疾病について転居前後における有病状況の変化を問う全国的なアンケート調査を実施しました。(表1、図1)
このアンケート調査結果に基づき、住宅の断熱・気密性能の向上による居住者の各種疾病の改善率について分析することで、健康維持効果を定量化しました。アンケート調査の回答は、5,500 軒、19,164人から得られ、回答者の男女比はほぼ1:1 で、年代は10 歳代未満、30 歳代、40歳代の割合が大きかったものの、ほぼ全ての年代から回答が得られました。
アンケート調査の結果、住宅の断熱・気密性能の向上により、さまざまな疾病の改善が定量的
に示されました。
その結果、10 の疾病全てにおいて、改善傾向が明らかとなったのです。
身体のエネルギーの回転は、体が寒くなると鈍ります。そのため、予防として体を温める事が大事になります。体温を0.1度、上げるか下げるかが、非常に重要になってくるのです。
2月の終わりの寒い日、我が家の朝の寝室温度は6.2度でした。
以前から「寒い家だなあ」と感じていたものの、実際の温度の低さにビックリ。妻の血圧を上げてしまったのも、冬期のみではあるものの、呼び寄せて同居していた亡き母の呼吸器機能を低下させたのも、有機溶剤だらけの合板を使いすぎたのではないかと、深く深く後悔をしています。
住医学研究会と出会い、本物の家づくりを知り、リフォームを決心しました。
無垢材の床、塗り壁、そして断熱。
すると、その効果は如実に現れました。特に、夜はトイレに起きなくなったことが大きかったです。深く、眠れるようになったからです。
私のように、すでに家を建てられている方はリフォームという選択になると思います。ですが、費用がなかなか、、、という声も少なくありません。
しかし、下の表をご覧下さい。
断熱化するとエネルギーだけでの投資効果便益では、30年近くかかるものの、疾病予防を入れれば、10数年で投資効果が得られます。
高齢者の場合、断熱化で一年長生きすると仮定し、夫婦での年金獲得総額を考慮すれば、三ヶ月で元が取れるのです。断熱をはじめ、住医学研究会が推奨する、耐久性・自然素材にこだわった健康住宅。会話が弾み、美味しい食事をとって、リラックスができ、ぐっすり眠れる家。
そんな住宅に住み、日々の暮らしを大事にしたら、健康長寿でしあわせな人生がきっと送れることでしょう。
1950年福島県生まれ。首都大学東京 名誉教授(都市環境学部・都市システム科学)。放送大学 客員教授。
福島県立医科大学を卒業し、東京大学で医学博士に。東京都衛生局、厚生省国立公衆衛生院、厚生省大臣官房医系技官併任を経て現職。福島県立医科大学、聖路加看護大学、東京医科歯科大学の非常勤講師も務めた。ロンドン大学大学院留学。公衆衛生のエキスパートとして、多摩市をはじめ全国地方自治体などと共働し、寿命とさまざまなファクターとの関連を大規模調査するなど「健康長寿」に関する研究と主張を続ける。
著書に【これからの保健医療福祉行政論】(日本看護協会)、【ピンピンコロリの法則】【元気で長生きな人に共通する生活習慣29】(ワニブックスPLUS新書)など。高等学校の教科書【最新高等保健体育 改訂版 2016】(大修館書店)の執筆にも携わる。