アレルギーとは
アレルギーは本来、体の外から入ってきた細菌やウイルスを防いだり、体のなかにできたがん細胞を排除するのに不可欠な免疫反応が、花粉、ダニ、ほこり、食べ物などに対して過剰に起こることをいいます。
過剰な免疫反応の原因となる花粉などを、アレルゲンと呼びます。
アトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症を含むアレルギー性鼻炎などが代表的なアレルギー疾患です。理由ははっきりしませんが、日本を含む先進国で患者が急増しています。
アレルギーの原因
アレルギーも生活習慣病などと同じ多因子遺伝性疾患で、複数の遺伝子が関与するアレルギーになりやすい体質をもつ人が、アレルゲンに暴露することにより発症する疾患と考えられています。
遺伝子が短期間に変化することは考えられませんので、先進国でアレルギーが急増している主要な理由が環境要因であることは間違いないでしょう。
たとえば、日本でスギの植林が盛んに行われたために、最近になってスギ花粉というアレルゲンが環境中に増え、スギ花粉症患者増加につながっています。また、気密性が高まった屋内でダニが増えやすい環境になっています。さらに、乳幼児期に細菌などが少ない清潔な環境にいると将来、アレルギー疾患にかかりやすくなる(衛生仮説と呼びます)ことも報告されています。そのほか、私たちの身のまわりに存在する化学物質の急増が関係しているとの指摘もあります。
一方、アレルギー体質に関与する遺伝子も明らかになり始めました。
アレルギーに遺伝子が関与する証拠
アレルギー疾患と診断された人の血縁者には、アレルギー疾患が多いことがわかっています。たとえば、日本人のスギ花粉症を対象にした疫学調査で3親等以内にスギ花粉症のいる人は51・7%、いない人は39・2%でした。また、双生児における気管支喘息の一致率は、一卵性双生児で20・0%、二卵性双生児で4・9%でした。
一卵性双生児では、その遺伝子は100%一致していますが、二卵性双生児では兄弟姉妹間と同じで50%が一致しています。一卵性双生児の喘息発症の一致率が高いことは、遺伝子が気管支喘息の発症に関与していることを意味する一方、100%遺伝子が一致しているにも関わらず、発症の一致率が20%しかないことは、遺伝要因よりも環境要因が大きいことを示しています。
アレルギーの仕組みと関与する遺伝子
血液中には白血球があり、そのなかにT細胞と名付けられたリンパ球があります。T細胞はTh1細胞とTh2細胞に分化しますが、ヒトの免疫反応はTh1とTh2のバランスの上に成り立っていると考えられています。
Th1はインターロイキン2(IL‐2)やインターフェロンガンマ、Th2はIL‐3、IL‐4、IL‐5などのサイトカインという物質を作ります。アレルギー疾患の人はTh2がTh1よりも優位で、アレルゲンが入ってくるとTh2由来のサイトカインは、B細胞を活性化させ、そのアレルゲンに対する免疫グロブリンE(IgE)を作ります。
病院でアレルギーの原因となる物質を調べることがありますが、これは血液中に存在するダニや花粉などに対するIgEの量を測定しているのです。このIgEがアレルゲンと反応すると、血液中の肥満細胞と名付けられた細胞からヒスタミンやロイコトリエンが放出されます。これが鼻の粘膜、皮膚、気管支に起こると、それぞれアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息を発症するのです。
現在、これらのアレルギーに関与する遺伝子を見つけだす研究が世界中で行われていて、どの遺伝子がアレルギー体質に関与しているのかが明らかになり始めました。