「長生きする家」「早死にする家」
投稿日:2019年10月12日
天井やフローリングの対策法
NHKが実施した「国民生活時間調査」によれば、60代男性が平日に家で過ごす時間は、平均で「約15時間」だという。定年後には自宅で過ごす時間はより増えていくが、住環境によって「病気リスク」が変わることはあまり知られていない。「長生きする家」「早死にする家」の特徴と、健康長寿のための“リフォーム術”を調査した。
【×=天井が高い、吹き抜けがある ○=「ファン」「サーキュレーター」で足元の冷気対策】
高い天井や吹き抜けは開放感があるが、冬場には室内の温度管理に注意が必要となる。『「病気にならない家」6つのルール』(KKベストセラーズ刊)の著者で、住環境アドバイザーの上郡清政氏が説明する。
「暖かい空気は上に向かい、冷たい空気は下に向かって足元に滞留します。そのため、吹き抜けのある家や天井の高い家では、“室内の高低温度差”が生まれやすい」
床付近は冷たく、天井に近づくほど暖かくなる──その健康リスクを示すデータがある。
国交省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」によれば、床付近の温度が15℃未満の住宅で生活している人は、16℃以上で生活している人に比べ、高血圧での通院が1.51倍に、糖尿病での通院が1.64倍に増えたという。
また、床上1m以上の室温の低下よりも、床付近の温度が下がった時のほうが、血圧への影響が大きいという結果も示された。
「足元が冷えると、足の動きが鈍り、転倒による骨折や捻挫のリスクも高まります。天井に後付けのファンを取り付けることで、室内の空気を循環させることが重要です」(上郡氏)
天井用のファンは、ホームセンターなどで数千円から購入できる。ただし、取り付けは高所での作業になるため、業者に任せるか、床に置くサーキュレーターを利用する手もある。
【×=フローリングなどの「冷たい床」 〇=「床用断熱シート」「滑り止めマット」を置く】
床付近の温度が下がり、足元が冷えがちなのが、床暖房のない合板フローリングを使った床だ。
「冬場はフローリングの部屋や板張りの廊下に、アルミと発泡材などでできた『床用断熱シート』を敷き、その上にカーペットやマットなどを敷くといい。ただし、カーペットやマットはダニが発生しやすいので、暖かくなったら片付けましょう」(上郡氏)
カーペットやマットが別のリスクを招くこともある。住まいのアトリエ・井上一級建築士事務所主宰の井上恵子氏が語る。
「カーペットやマットがズレて足を滑らせ、転倒する可能性があります。厚労省の人口動態調査によれば、65歳以上の家庭で起きた不慮の事故は、餅などの誤嚥による窒息に次いで、家での転倒が多い。
カーペットの下に敷く『滑り止めマット』は数千円程度で購入できます。カーペットの裏の四隅を固定するための両面テープは数百円程度で手に入ります」
【×=給気口など換気システムがある ○=「フィルター」を取りつける】
昔ながらの木造家屋に比べ、近年のマンションや洋風建築は断熱性・気密性が高い。そのため2003年以降、新築の住宅には、常に家の中の空気を入れ替える「換気システム」(給気口など)の設置が義務づけられている。
だが、湿気対策になる一方で、別のリスクも呼び込むと前出・井上氏が指摘する。
「換気システムの給気口にフィルターがついていないと、そこから花粉や黄砂、PM2.5などの粉塵を室内に取り込んでしまいます。これら微粒子が体内に入ると、風邪に似た症状や喘息アレルギーを発症する可能性があります。
フィルターが標準装備されていない、装備されていても経年劣化しているケースは少なくありません。フィルターは500円程度で販売されているので、自宅の給気口に合う商品を利用しましょう」