40℃超でも原発なき首都圏の電力が足りてる理由―『続』
投稿日:2018年07月29日
40℃超でも原発なき首都圏の電力が足りてる理由――2020年東京五輪でひっ迫リスクは?
「2011年の震災以降に節電が進み、国内の電力需要が抑えられてきた。
この猛暑の中、電力会社は需要予想を立てて対応している。
しかし、予想をはるかに超えて、猛暑が長期化すれば、ひっ迫のリスクは一段と高まってくる」と話すのは、
エネルギー経済研究所で総括研究主幹を務める小笠原潤一氏。
「猛暑が長期化すれば、輸入に依存しているLNGなどの燃料が不足する可能性がある。
また、渇水は水力発電の運転に影響を与えるだろう」と述べた。
東電が保有する揚水電力発電は、
低い位置にあるダム(貯水池)から高い方のダムへと水を汲み上げ、電力需要がピークを迎える際に、下部貯水池に流す水の勢いで発電するというもの。
東電パワーグリッド・広報によると、長い期間、雨がまったく降らない状況が続けば、渇水のリスクは高まるが、現時点で渇水を懸念する状況にはないとしている。
毎年、異常気象と言われるほどに、日本の夏の暑さはその深刻さを増している。
2020年には夏季オリンピックが東京で開かれるが、東電は電力の需要をどう予想しているのか?
東電は、2020年夏の3日間の最大需要平均を5328万kWと予測している。
予備率予想は11.8%と、十分な供給力だ。比較的に穏やかな夏を想定して需要予測を行っているのか、「保守的な」予測とも思える。
「オリンピックによる電力の特別需要を正確に予測するのは難しいが、仮に100万kW上振れしても、十分な供給力を確保している」(東電パワーグリッド・広報)
2020年7月の東電の供給力に原発の発電能力は含まれていないという。
一方、西日本の電力事情は東日本より深刻だ。
関西電力は7月18日に他社からの電力融通を受けた。
2013年8月の盆明けに緊急調達を行った時と同じ状況だ。
中部電力の50万kWを筆頭に、中国電力が20万kW、四国電力が13万kW、北陸電力が10万kW、東電パワーグリッドが7万kW、合計100万kWを関電に供給した。
16時から17時の時間帯で、冷房需要の増大に対して太陽光の発電量が落ちる夕方だった。
関電については、
舞鶴発電所1号機(出力90万kW)と南港発電所3号機(同60万kW)の不具合で苦境に陥った5年前と同じように、
今回も姫路第二発電所5号機(同48.1万kW)が発電機の不具合で7月22日に停止し、復旧のメドが立っておらず(7月24日時点)、目が離せない状況だ。
これから猛暑が続けば、再び緊急融通の可能性も現実味を帯びてくるかもしれない。
電力関係者によると、他の電力会社についても、
老朽化した火力発電所をフル稼働させている状態で、
トラブル一つあれば緊迫した状況に陥ることも十分考えられるという。
一方、関電の大飯原子力発電所3・4号機(各118万kW)、高浜原発3号機(同87万kW)は、101~103%の増出力でフル稼働を続けている。東日本については原発を稼働せずとも安定供給が可能との見方が強まっているものの、西日本の電力需給については、上記の火力発電所の逼迫した状況を見る限り、ベースロード電源としての原発の必要性が失われたとまでは言えない状況だ。